過去にどんな災害が起きたかを知る
地震災害の最大のものは、1995年に発生した阪神・淡路大震災で、6,433人の死者と4万3,792人もの重軽傷者を出しました。建築物、構造物の被害は、全壊10万4,004棟、18万2,751世帯、半壊13万6,952棟、25万6,857世帯が罹災しました。
また、平成17年3月の福岡県西方沖地震では、木造戸建て住宅の全壊が129戸、半壊が199戸、共同住宅の全壊3棟、半壊が19棟の被害が出ました。
火災では、平成13年9月に新宿区歌舞伎町の5階建雑居ビル火災が記憶に新しいところです。この火事により44名の方が犠牲になりました。
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亀裂がはいったマンションの外壁 |
これを機に火災時の人命危険を少なくするため、火災の早期発見と警報を目的とした自動火災報知設備の設置、避難器具による避難経路を確保することなどとともに、建物の防火管理を充実するため消防法が改正されました。
風水害では、平成15年9月の台風14号は、最大瞬間風速74.1m/秒という猛烈な強風によって宮古島に多大な被害をもたらしました。
さらに、台風の本土上陸数が10個と記録的な年となった平成16年は、8月下旬から9月上旬にかけて連続して発生した台風16号および台風18号のほか、9月下旬の台風21号、そして10月中旬の台風23号が強い勢力を保ったまま日本列島を襲い、強風と激しい降雨によって各地に様々な被害をもたらしました。
集中豪雨では、東京で平成17年9月4日の夕方から5日の未明にかけて大規模な集中豪雨が発生し、妙正寺川の上流域にある杉並区の下井草観測所では、1時間あたり最大で112ミリの降雨を記録しました。この豪雨により、妙正寺川や善福寺川の流域では大規模な浸水被害が発生し、中野区や杉並区などを中心に3,000戸以上が被災しました。
地震災害における法的責任
地震の場合、震度7ではライフラインは完全にストップします。また、震度6においても家屋の倒壊や火災による被害が増大します。 実際に、阪神・淡路大震災においては、電気・ガス・水道はすべてストップし、電話は不通になりました。電気が復旧すると、断線した送電線のため火災が発生しました。
震度6弱の福岡県西方沖地震では、1.ブロック塀の破損、2. 建物をつないでいる結合部の破損、3. 貯水
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亀裂がはいったマンションのドア |
槽や電気温水器の倒壊により配管が漏水等の建物への被害があり、電話も不通になりました。 これらの地震災害において、オーナーの法的責任が問われたケースがあります。阪神大震災において、震度6以上の地震であっても、オーナーが法的損害賠償責任を負うべきであるとされる判決がくだされたケースが神戸地裁平成11年9月20日判決(判例時報1716号105頁)〕です。以下に紹介しましょう。
事案の概要
Yは、神戸市東灘区に賃貸マンションを所有し経営していたが、平成7年1月17日の阪神淡路大震災により、マンションの1階部分が完全に押しつぶされ、1階部分を賃借していた賃借人のA、B、C、Dが死亡した。
そこで、マンションの入居者の遺族XらがオーナーYを相手に、本件マンションは建築当時の建築基準法令の定める技術的水準に適合しておらず、設置に瑕疵があったと主張して総額3億334万円の損害賠償を求めて訴訟を提起した。
Xらの主張 : 本件建物が当時の建築基準法令の定める技術基準に適合せず設置に瑕疵があったことは明らかである。
Yの主張 : 本件建物は建築当時の耐震基準を満たしており、建物が倒壊したのは、予想を超える大きさの地震が原因である。
神戸地裁の判決内容
1. 判決主文 YはAの遺族に対し2,169万円、Bの遺族に対し3,199万円、Cの遺族に対し3,748万円、Dの遺族に対し3,767万円を支払え。
2. 判決理由
(1)本件建物の瑕疵
本件建物は、登記簿上は「軽量鉄骨コンクリートブロック造一部鉄筋コンクリート造陸屋三階建」と登記されているが、柱や梁が軽量鉄骨造であり、外壁や界壁がコンクリートブロック造であり、床や陸屋根が鉄筋コンクリート造であって、通し柱のうち少なくとも1本の柱脚は厚さ6ミリのベースプレートを介して無筋コンクリートの基礎と1本のアンカーボルトでしか接合されておらず、すべての柱について、柱脚部分に補助鋼(リブ)が溶接されておらず、斜材は全く入っていなかった。
本件建物は、軽量鉄骨造として考えると、本件のような軽量形鋼の柱と梁の骨組みだけでは水平方向の荷重に抵抗できず、構造計算上ほとんど構造耐力のない建物であったと認められ建築当時を基準に考えても、建物が通常有すべき安全性を有していなかったものと認められる。
(2)本件地震の程度
本件地震のマグニチュードは7.2であり、わが国の観測史上1、2を争う最大級の地震であった。地震による建物被害が特に大きかった地域は、気象庁が震度7の地域として発表した地域と一致している。
震度7の地域は木造建物の全壊率が30%以上であり、本件建物も震度7の地域に存在している。
(3)本件建物の瑕疵と建物倒壊との間の因果関係
地震は現行の設計震度をも上回る揺れの地震であったのであるから、本件建物が仮に建築当時の設計震度による最低限の耐震性を有していたとしても、本件建物は本件地震により倒壊していたと推認することができるし、逆に、本件地震が建築当時堆定されていた水平震度の揺れの地震であったとしても、本件建物は倒壊していたと推認することができる。
しかし、本件建物は、結局は本件地震により倒壊する運命にあったとしても、仮に建築当時の基準により通常有すべき安全性を備えていたとすれば、その倒壊の状況は、壁の倒れる順序・方向、建物倒壊までの時間等の点で本件の実際の倒壊状況と同様であったとまで推認することはできず、本件賃借人らの死傷の原因となった、一階部分が完全に押しつぶされる形での倒壊には至らなかった可能性もあることを考えると、本件賃借人らの死傷は、本件地震という不可抗力によるものとはいえず、本件建物自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となっているものと認めるのが相当である。
(4)損害賠償額の算定
本件のように建物の設置の瑕疵と想定外の自然力とが競合して損害発生の原因となっている場合には、損害の公平な分担という損害賠償制度の趣旨からすれば、損害賠償額の算定に当って、右自然力の損害発生への寄与度を割合的に斟酌するのが相当である。そして、右地震の損害発生への寄与度は、本件建物の設置の瑕疵の内容・程度及び本件地震の規模・被害状況からすると5割と認めるのが相当である。
賃貸住宅経営のためにオーナー・管理会社は何をすべきか
賃貸住宅経営をしていく上で、物件の所有者であるオーナー、および管理会社は災害対策として何をすればいいのでしょうか。
賃貸住宅経営に関する災害対策といえば、真っ先に思い浮かぶのが建物の保全(安全)対策です。
人知の及ばないところで起きる自然災害ですから、とりあえず保険に加入することはオーナーとしての義務ですし、自己防衛にも必要なことです。
また、万一被害を受けたなら、入居者の安全と生活確保を第一に考える、といったことが、主だったことになると思います。
さらに、新耐震基準が適用された昭和56年6月1日以前に建築確認を受けている物件の場合、既存の構造計算書では新耐震基準への適合性のチェックはできないので、オーナー様は新たに耐震診断を行い、安全性を確認する必要があります。
その結果、新耐震基準を満たさず建物に瑕疵があった場合は、オーナー・管理会社の責任が問われる場合もありますので、補修やリフォーム等を行う必要があるでしょう。
次号において、火災、その他災害について、また保険を中心にした災害対策の具体案を紹介します。
