トップ > 業界トピックス > 国交省・民間賃貸住宅部会「最終とりまとめ」を発表(1)

業界トピックス

国交省・民間賃貸住宅部会「最終とりまとめ」を発表(1)

1.民間賃貸住宅をめぐる現状と課題

 民間賃貸住宅部会は、以下の4点において方策の検討が行われることを「中間とりまとめ」として発表しました。

① 民間賃貸住宅を巡る紛争の未然防止
② 民間賃貸住宅を巡る紛争の円滑な解決
③ 滞納・明渡しを巡る紛争の解決
④ 民間賃貸住宅ストックの質の向上

 これを受けて政策の検討に当たっては、個別のトラブル・紛争において入居者の利益が害されることのないようにするとともに、市場の機能が発揮され、契約・管理面も含めて良質な民間賃貸住宅が市場において供給され、入居希望者に良質な民間賃貸住宅を選択することができようにする視点が必要であるとしています。
 具体的には、物件や契約内容について貸し手の把握している情報と借り手の把握している情報に格差があるという、いわゆる情報の非対称の存在や、原状回復や滞納・明渡しをめぐるルール等が十分に明確でないことによる交渉費用等の取引費用の上昇が市場の縮小を招くおそれがあることから、情報格差の解消や、取引費用の低減という視点からの検討が重要であるとしています。また、一部の借家人による家賃の滞納等によるコストの増加を他の多くの借家人が家賃上昇というかたちで負担することは公正の観点から問題であり、借家人全体の利益という視点も重要であるとしています。
 なお、低所得者の住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保については、契約当事者間の問題として市場のみにおいて解決すべき問題ではなく、住宅セーフティネットの観点からも、公的主体の役割も重要であるとしています。
 さらに、政策の検討に当たっては、賃貸人側については、貸主が高齢の個人である割合が高いことや、民間賃貸住宅の管理を委託している割合が高いこと、また、賃借人側については、連帯保証人に代わり、家賃債務保証会社の利用が相当多くなってきていること等の民間賃貸住宅をめぐる現在の状況を念頭においた検討が必要であるとしています。
 

siryo1_1001.jpg

 

2.紛争の未然防止について

 民間賃貸住宅市場の発展にとって最も重要なことは、賃貸人・賃借人双方が安心して市場に参加できる環境を整備することであり、そのためには、まず、民間賃貸住宅をめぐる紛争を未然に防止するための仕組みを構築することが重要であるとしています。
 民間賃貸住宅市場においてトラブルが発生する原因としては、賃貸人と賃借人の間の情報の非対称の問題や、退去時における原状回復の範囲等の賃貸借契約等に関するルールが不明確なことが挙げられます。
 このような視点から、民間賃貸住宅市場における情報提供の問題と、国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」等の賃貸借契約等に関するルールの明確化の問題について検討しています。

 

(1)民間賃貸住宅に関する情報提供の充実

 物件選定段階において、物的性能に関する情報、退去時の原状回復等に関する契約内容の詳細、管理に関する情報等を含めて、民間賃貸住宅に関する様々な情報を入居希望者が入手できるように、これらの情報提供の仕組みを充実することが望ましく、専門性の高い情報もあることから、情報提供に当たっては、入居希望者の判断を容易にするように、予め性能や契約・管理内容等を評価することも必要としています。
 さらに、情報の内容の信頼性確保という点からは、公平・中立な第三者がその内容を確認・評価する仕組みの必要であるとしています。
 今後は、情報提供・評価の対象とする具体的項目、その評価基準や評価方法、情報提供・評価の主体、評価に係るコストやその負担のあり方について、入居希望者のニーズ等も踏まえた具体的な検討の必要性を結論付けました。

 

市場関係者に関する情報の提供

 民間賃貸住宅市場が円滑に機能するためには、物件に関する情報のみならず、賃貸人、賃借人、管理会社、家賃債務保証会社等の市場関係者に関する情報の提供も重要であるとしています。

 

(2)民間賃貸住宅に係る原状回復等のルールについて

 退去時の原状回復に関しては、原状回復ガイドラインが一定程度普及してきているものの、トラブルについても多く発生しています。これは、原状回復ガイドラインの具体的事例への当てはめが難しいという指摘があるほか、実際の賃貸借契約書においては、原状回復の範囲を定める規定が抽象的なものが多いことによるものだとしています。
 また、入退去時に立会いや書面での現状の確認が行われていないことが敷金返還のトラブルの一因にもなっていると指摘されており、敷金以外の一時金(敷引き、更新料等)についても、消費者契約法上の争いとなっている事例が多く発生しています。
 入居中の管理をめぐるトラブルについては、賃貸人と管理会社の間の管理委託契約の内容が不明確であることや、管理会社の行う管理業務の範囲が賃借人に分からないことが原因であると指摘されています。

 

原状回復ガイドラインの見直し

 原状回復ガイドラインは、紛争防止のみならず、紛争になった場合の処理の基準として機能するものです。原状回復ガイドラインの見直しに当たっては、賃貸人・賃借人双方にとっての予測可能性を高める観点から、具体的事例への当てはめが容易となるよう、判例の集積を踏まえた上で、また、判例のない部分については必要な検討を行った上で、一層の具体化を図ることを検討する必要があるとしています。

 

賃貸住宅標準契約書の見直し

 トラブルの未然防止の観点から、賃貸借契約書において、原状回復に関する当事者間の約定を明確にする必要性、また、入退去時の立会いや書面での確認についても、賃貸借契約書において明確にする必要性の観点から、国土交通省の賃貸住宅標準契約書の見直しが提議されました。
 また、賃貸住宅標準契約書において、敷金以外の一時金については、全国的な慣行でないことから特段の規定は置かれていませんが、平成12年の消費者契約法の施行以後、更新料等の各種一時金(特約)の有効性については、裁判所において、額の妥当性や対価性、賃借人の理解の状況等の様々な要素を考慮して個別のケースごとに判断されているところです。したがって、これらの一時金の取扱いについては、今後の裁判の状況等を見極めつつ、対応を整理していくことが必要であるとしています。

 

標準管理委託契約書の見直し

 管理業務に関しては、その内容が契約上明確となるよう、国土交通省の標準管理委託契約書の普及や見直しを図っていくことが必要であるとしています。こうした課題への対応については、賃貸不動産の管理業の適正化について検討している国交省社会資本整備審議会産業分科会不動産部会において議論されているところであるとしています。

 

原状回復等のルールの普及

 原状回復ガイドラインや賃貸住宅標準契約書を普及すること自体にも一層努めるべきであり、普及に向けては、通常損耗の範囲が賃貸人の負担となる理由の説明を加えるなど、賃貸人・賃借人双方が内容について納得できるようにすることが必要であるとしています。
 ルールの普及等に当たっては、個人家主が多いことに加えて、個人家主では自己管理のケースも比較的多いことや、さらには、契約手続等に不慣れな若年層が居住するケースも多いといった事情を考慮すべきであるとしています。
(次回に続く)
siryo2_1001.jpg