2005年11月に発覚した構造計算書偽装事件(姉歯事件)を契機に、こうした問題の再発を防止するため、昨年の通常国会及び臨時国会において、建築基準法・建築士法等が改正された。
このうち、建築確認・検査の厳格化、民間確認検査機関に対する指導監督の強化、建築士等に対する罰則の強化など一部の改正事項については、今年6月20日から施行されており、その概要は、特に建築確認・検査の厳格化にある。
下記に今回の改正のポイントを紹介しよう。
(1) 構造計算適合性判定制度の導入
構造計算書の偽装等を防止するため、高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物など一定の高さ以上等の建築物については、第三者機関による構造審査(ピアチェック)が義務付けられた。
【図-1参照】

(2) 構造計算適合性判定制度の導入に伴い、建築確認の審査期間が延長された。
(21日間→35日間、ただし、詳細な構造審査を要する場合には最大で70日間)
(3) 建築確認や中間・完了検査に関する指針が告示で定められ、建築主事や民間機関の確認検査員はこれに従って適正に業務を行うことになった。
従来、設計図書に関係法令に適合しない箇所や不整合な箇所がある場合には、建築主事等が申請者にその旨を連絡し、補正させた上で確認するという慣行がみられたが、こうした慣行が偽装問題等の一因となっていたことを踏まえ、指針においては、誤記や記載漏れなどを除き、図書の差替えや訂正がある場合には、再申請を求めることとしている。したがって、申請前に設計図書のチェックを十分に行うことは当然のこと、あらかじめ建築計画の内容を確定した上で、確認申請を行う必要がある。
(4) 3階建て以上の共同住宅については、中間検査が義務付けられた。
(5) 確認申請に係る建築設計に複数の設計者が関わっている場合には、責任を明確にするため、確認申請書の設計者欄に全員の氏名等を記載することとされた。
改正法の施行以来、住宅着工戸数は、対前年同月比で、7月23%減、8月43%減となり、9月には過去最大の44%減と落ち込んでしまった。
【図-2参照】

これは建築確認の審査期間が法改正前より長くかかるようになったためだ。鉄筋の本数やコンクリートの量など構造計算に関する項目を別の審査機関がダブル・チェックをすることで、耐震性や安全性を確保するのだが、以前は3ヶ月程度だったものが5~6ヶ月かかるようになってしまったのである。
また、申請書類提出後では、構造計算に支障のない範囲の変更も認められず、再申請をして最初から手続きをやり直さなければならない上に、申請ごとに申請料がかかるという問題もある。
国土交通省は「軽微な変更」なら認めるとしていたが、この「軽微な変更」の定義があいまいだったため、審査が厳しくなるということもあった。
さらに、住宅着工戸数の激減の影響は他方面にわたって広がり続けている。当然、マンションデベロッパーの業績は悪化している。それに追い討ちをかけるのが金利の負担増だ。審査期間3ヶ月程度が倍の6ヶ月へと長引けば都心のマンション(総戸数100戸・総事業費50億円)では、金利・年1.5%として800万円の負担増という計算になることでも分かるように採算性に響いてしまう。その分、事業用地の取得コストも上昇する。
周辺産業も深刻だ。建材や住設器機産業も急激な需要減に直面している。例年ならば繁忙期を迎えているはずの住設器機関連の工場が閑古鳥状態というケースもあり、軒並み前年同期比1割減というのは、普通の状態となっている。
このような経営の圧迫は倒産件数を激増させている。10月の建設業の倒産件数が今年最多の390件(東京商工リサーチ調べ)に達したのである。
GDP(国内総生産)への影響も懸念されている。関連市場も合わせると約50兆円に及ぶ住宅市場だが、7~9月期の住宅投資が前期比で10.2%減となるとGDPを同0.3%押し下げることになるからだ(野村証券金融経済研究所試算)。
このような事態の収拾を図るため、国土交通省は11月14日、改正建築基準法の施行規則を一部改正、耐震性や防火面で安全性が確保できれば、申請後でも設計変更を認めるとしたのである。また、提出が義務付けられた建築材料などに関する大臣認定書の写しの添付も、審査機関の要請がなければ省略できるようになった。
しかし、その効果が現れるまでには、まだまだ時間がかかることだろう。